Owners Voice Vol.01 森田 恭通 GLAMOROUS co., ltd. 代表 独創的な発想と、まさに「そこでしか見られない」デザインをもって、ブティックからホテルまで世界各地で活躍する森田恭通氏。「オーデマ ピゲ ブティック銀座」のファサード、そして9Fのサロンが森田氏によるデザインですが、なんと2008年秋には、「ミレネリー リミテッド エディション by MORITA」が発表されました。オーデマ ピゲ ブランドの130年を超える歴史上、ブランドのデザイナー以外がプロダクトデザインを手がけるのはまさに前代未聞のこと。前例を破る、麗しい楕円の煌めきが刻む時について森田氏が語りました。


「時計に興味はありますか?」、むちゃくちゃ興味があります(笑)

インタビュー当日、森田氏がその腕に着けていたのは、ブラックダイヤルにダイヤが煌めく「ミレネリー リミテッド エディション by MORITA」。

2008年の秋に発表されたこのモデルは、ダイヤルの全面とベゼル、ラグにダイヤがセッティングされたタイプと、ブラックダイヤルにピンクゴールドのスタッズと12のダイヤをあしらったタイプの2パターンがあるが、何より話題を呼んだのは、「オーデマ ピゲのデザイナー以外によるデザインであること」でした。

「このデザインを手がけることになったのは、ファサードが完成してからでした。完成して、スイスの本社の方々を交えて食事をしているとき、『時計に興味はありますか』と聞かれて、むちゃくちゃ興味がありますと(笑)」

オーデマ ピゲと森田氏の直接的な関わりは、「オーデマ ピゲ ブティック銀座」のファサードとサロンのデザインが最初だったと言います。

「そこで僕が『じゃあ、ぜひ時計をデザインさせてください』と言ったら、まさかそんな答えが返って来るとは思ってなかったようで、そのときはびっくりされてしまって。今までオーデマ ピゲは、外部のデザイナーに時計をデザインさせたことはありませんから、と答えられてしまったんですけどね」

しかし、そこで引き下がる森田氏ではありませんでした。

スイス本社の皆さんに、勝手に2本の時計のデザインを持って行った

「前例がないとは言われましたが、まあ、まずはトライさせてくださいと。そこでその次にスイス本社の皆さんが日本に来たときに、勝手に2本の時計のデザインを持って行ったんですね。すると、2本とも『いいじゃないか』ということで、商品化が決まりました」

すごい話です。時計づくりの伝統においては、オーデマ ピゲは創業当時の姿勢をかたくなに守り、それが覆ることはめったにないにも関わらず、有無をいわせぬデザインの力が、ブランドポリシーの琴線に触れました。ブラックとダイヤ、そしてピンクゴールドのコンビネーションは、男女問わず楽しめるのも魅力の1つでしょう。

「そのとき、デザインのコンセプトの話をしました。まずはオーデマ ピゲの時計としていろいろと種類がある中で、よりユニセックスなものがあったら良いなということと、(ブティックの)ファサードのイメージと同じくピンクゴールドを使いたいという思いがあるということと。時計というのは『天体』だと僕は思うんですが、つまり月と太陽、そして未来のモチーフがあって、そこに森田らしさを加えるならどうなるだろうと考えたときに、昼間はもちろんまじめに働いていますが、夕方の6時を過ぎたらもうシャンパンを飲む時間でしょ!と(笑)。それで、シャンパンの泡をこの『ミレネリー』で表現しては、という話をしたんです」

オーデマ ピゲの伝統に、新たなモダンさを加える思いを込めて

ただ、綺麗な、豪華な時計をデザインするのではありません。楕円と真円が織りなすミレネリーの宇宙に、ダイヤとピンクゴールドのスタッズというシャンパンの泡を浮かべ、「MORITAらしさ」と「オーデマ ピゲらしさ」を見事に融合させました。

「ハッピーアワーからディナー、ミッドナイトまで、人それぞれの楽しみ方があるんじゃないかと僕は思うんですね。もちろんちゃんと、オーデマ ピゲの伝統に、新たなモダンさを加える思いを込めて。『クラシック』と『モダン』がミレネリーのテーマですから。そのコンセプトがブランド側の皆さんに気に入っていただけたようで、こうして形になりました」

もちろん時計のデザインにも驚きなのですが、驚きはそれだけではありません。このモデルは、オリジナルのボックスまでが森田氏のデザインなのです。

「それで実際商品化が決まったときに、ボックスもデザインした方がいいんじゃないという話になりました。そこで、あまり時計のイメージと外れてもいけないと思って」

これまでさまざまな時計のボックスを見た人でも、こうしたボックスは世界にも例を見ないでしょう。高級腕時計メゾンのボックスは、重厚なイメージの木材やレザーを使用したものが多いですが、これはなんとアクリル製。しかも、このアクリルのボックスまでちゃんと「シャンパンの泡」なのです。

時計のボックスが、それだけでちゃんと時計置き場になるように

「この時計を入れるのは木の箱じゃない、じゃあ時計がシャンパンの泡に包まれているようにしようと。それから、時計のボックスって、時計を買ったら立派なやつが一緒に付いてきますけど、たいてい家に帰ったらどこかにしまい込んじゃいますよね。でもそれはもったいないでしょ?だったらリビングとか、ベッドサイドに置いて、インテリアにもなるボックスにして、それだけでちゃんと時計置き場になるようにすればいいなと思って」

森田氏は、デザインのためのデザインはしません。空間をデザインするときも、遊びに来る人、利用する人、働く人、必ずそこにはちゃんと「人」がいます。流麗で独創的なそのデザインには必ず意味があり、対象となる人があって初めて動き出す機能を備えているのです。

それにしてもこのボックス、実際に製品として作るのは非常に大変だったと言います。

「アクリルの中に、金色の気泡が入っているんですが、技術的にこれを作るのが可能だというのは知っていましたが、これだけのアクリルの塊で、なおかつクオリティを均一に、というのは難しかったようで、考えた僕より、携わる周りのスタッフが死にそうになっていましたね(笑)」

思いを実際の形にするのがデザイナー。時計への思いを、本当にオーデマ ピゲの時計で実現化した男に、「妥協」はないようです。

森田 恭通 (もりた やすみち)

GLAMOROUS co.,ltd.

1967年大阪生まれ

現場で積み重ねた経験を活かし、フリーランスとして活動ののち、(株)イマジンにてチーフデザイナーを務める。
1996年、森田恭通デザインオフィスを設立。
2000年6月にはGLAMOROUS co.,ltd. として再スタートを切る。
2001年の香港プロジェクトを皮切りに、ニューヨーク、ロンドン、上海など海外へ活躍の場を広げている。
また、インテリアに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行っている。

http://www.glamorous.co.jp新しいウィンドウで開く

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